第2部
第6章
障害者の自立支援の推進●第6章
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第6章
障害者の自立支援の推進
第1節 障害者の自立生活を支援するための施策の推進
1 障害者施策の概要
(1)障害者自立支援法の成立と内容
障害保健福祉の分野においては、2003(平成15)年4 月、行政がサービス内容を決定する「措置制度」
に代えて、障害者自らがサービスを選択し、事業者との対等な関係に基づき、契約によりサービスを利用
する「支援費制度」が導入された。さらに、2005(平成17)年10 月に障害者自立支援法が成立し、2006
(平成18)年4月1日に一部施行、同年10月1日に全面施行された。
障害者自立支援法は、障害者に対するサービスの計画的な整備、就労支援の強化、地域生活への移行の推
進等を通じ、障害者が安心して暮らすことのできる地域社会の実現を目指すものである。具体的には、
①障害の種別にかかわらず、一元的にサービスを提供する仕組みの創設
②障害種別ごとに複雑であった施設・事業体系の再編を通じた利用者本位のサービス体系への見直し
③新たな就労支援事業の創設や福祉と雇用の連携強化による就労支援策の更なる充実
④支援の必要度に関する客観的な尺度である障害程度区分の導入
⑤利用者負担の見直しと国の費用負担の義務化により制度を皆で支える仕組みへの見直し
等が盛り込まれている。
(2)障害者自立支援法の定着に向けた取組み
障害者が安心して暮らすことのできる地域社会の実現のためには、障害者自立支援法の着実な定着を図る
ことが必要である。その一方で、本改革が抜本的なものであることから、様々な意見に丁寧に対応するた
め、まず、2006年12月に、特別対策を決定し、利用者負担の更なる軽減や、事業者に対する激変緩和措置
など3年間で国費1,200 億円規模からなる改善策を実施している。さらに、2007(平成19)年12 月には、
与党障害者自立支援に関するプロジェクトチームの提言を受け、障害者自立支援法の抜本的な見直しに向
けた緊急措置を決定し、2008(平成20)年度から実施しているほか、平成20年度第2次補正予算では、特
別対策で各都道府県に設置した基金の延長及び積増し(2009(平成21)年度~2011(平成23)年度で約650
億円)を実施し、さらに平成21年度補正予算においても、福祉・介護人材の処遇改善等のため同基金に1,400
億円を超える積増しを実施している。
(3)障害者自立支援法の見直し
障害者自立支援法については、附則に施行後3年を目途とする見直しの規定が設けられており、この見直
しについては、2008年4月から、社会保障審議会障害者部会を開催し、19回にわたる議論が行われ、同年
12月に「障害者自立支援法施行後3年見直しについて」(報告書)が取りまとめられた。
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これらの内容を反映し、利用者負担の見直し、障害者の範囲及び障害程度区分の見直し、相談支援の充実、
障害児支援の強化、地域における自立した生活のための支援の充実などを内容とした「障害者自立支援法
等の一部を改正する法律案」が平成21年通常国会に提出されたが、審議未了廃案となった。
また、障害福祉サービス費用(いわゆる報酬)の額について、①良質な人材の確保、②サービス提供事業
者の経営基盤の安定、③サービスの質の向上、④地域生活の基盤の充実、⑤中山間地域等への配慮、⑥新
体系への移行の促進、を基本的な視点として、プラス5.1%の改定を行い、2009年4月から実施している。
(4)社会参加促進施策の推進
身体障害者補助犬法の一部を改正する法律が平成19年臨時国会において成立し、2008年4月から都道府
県等が苦情の申出等に関する対応をする規定が明確化され、同年10月から一定規模以上の事業所又は事務
所において勤務する身体障害者補助犬の使用の受入れが義務化されている。こうしたことを踏まえ、厚生
労働省としては、都道府県等の相談窓口を支援する目的で、「身体障害者補助犬受入れ等相談支援対応マ
ニュアル」を作成するとともに、改正の趣旨及び補助犬の役割等についての一層の周知を目的として、ポ
スター、パンフレット、ステッカー等の作成・配布や、ホームページの開設等の啓発活動を行っている。
第2節 精神障害者の地域移行を支援するための施策の推進
1 精神保健医療福祉に関する取組み
精神保健福祉施策については、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な考え方に基づき展開
してきており、入院中の精神障害者の地域生活への移行のための支援や地域において自立した生活を送る
ために必要な支援の充実を図っていくことは、喫緊の課題である。
厚生労働省では、2004(平成16)年9 月に、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以下「ビジョン」
という。)を取りまとめ、受入条件が整えば退院可能な精神障害者の10年後の解消を目指すこととしてい
る。「ビジョン」の考え方を踏まえ、これまで、
①2006(平成18)年から施行された障害者自立支援法において、身体・知的・精神といった障害種別に
かかわらず、一元的にサービスを提供する仕組みの創設、
②2008(平成20)年度の診療報酬改定において、急性期の評価の重点化、病院の退院促進の取組みの評
価の充実、
③2008 年度から、受入条件が整えば退院可能な精神障害者の退院支援や地域生活支援のための「精神障
害者地域移行支援特別対策事業」の実施、
等の取組みを行ってきたところである。
2 精神障害者の地域移行の更なる推進
(1)精神保健医療福祉の在り方等に関する検討
上述の「ビジョン」は、おおむね10年間の精神保健医療福祉施策の具体的方向性を明らかにしたもので
あるが、2009(平成21)年9月の中間点において、後期5年間の重点施策群を策定する必要がある。
このため、厚生労働省においては、2008 年4 月より、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検
討会」を開催し、①地域生活への移行及び地域生活の支援、②精神保健医療体系の再構築、③精神疾患に
関する理解の深化(普及啓発)の柱に沿って、議論を行い、2008年9 月には「これまでの議論と今後の検
討の方向性(論点整理)」を、2008年12月には「中間まとめ」を取りまとめ、社会保障審議会障害者部会
に報告した。「中間まとめ」においては、①地域生活の拡充のための相談支援、②地域生活を支える福祉
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サービス等の充実、③精神科救急医療の充実・精神保健指定医の確保、④入院中から退院までの支援、等
に関する様々な提案が行われた。
この報告の趣旨を踏まえ、障害者の地域生活への移行を一層進める観点から「地域相談支援」を新たに給
付の対象とすること等を内容とする「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」と期を一にして、精
神保健及び精神障害者福祉に関する法律についても、精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の支援
を一層推進する観点から、①医療施設の設置者や管理者と障害福祉サービス事業者等との連携、②都道府
県による精神科救急医療体制の確保、等を内容とする見直しを盛り込んだところである。
さらに、「論点整理」に基づき、「ビジョン」の後期5年間の重点施策群の策定に向けて、精神保健医療
や国民の理解の深化(普及啓発)に関する内容等についても、引き続き検討を行っているところである。
(2)精神保健福祉士の在り方等に関する検討
障害者自立支援法の制定を始め、精神保健医療福祉施策を取り巻く環境は大きく変化しており、精神保健
福祉士に求められる社会的役割は変化している。このため、2007(平成19)年12月から、精神保健福祉士
の高い専門性を担保できるような養成の在り方等について、検討を行い、2008年10月に、中間報告書を取
りまとめ、同年11月に社会保障審議会障害者部会に報告したところである。
この報告の趣旨を踏まえ、障害者の地域生活への移行を一層進める観点から「地域相談支援」を新たに給
付の対象とすること等を内容とする「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」と期を一にして、精
神保健福祉士法についても、精神保健福祉士が、精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の支援を担
うことを明確にする観点から、改正を行うこととしているところである。また、精神保健福祉士の養成カ
リキュラムについても、引き続き見直しの検討を行っているところである。
第3節 発達障害者支援施策の推進
1 発達障害者支援の概要
(1)発達障害者支援法の成立
発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に
寄与することを目的とした発達障害者支援法が平成16 年臨時国会において成立し、2005(平成17)年4
月に施行された。
(2)発達障害者支援施策の推進
発達障害者の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援を推進するため、2006
(平成18)年6月、厚生労働事務次官を本部長とする「発達障害対策戦略推進本部」を設け、医療施策、
保健施策、福祉施策及び就労施策等の制度横断的な関連施策の推進を図っている。また、2008(平成20)
年8 月には、発達障害者施策検討会を開催し、発達障害者支援の現状の課題を整理するとともに、今後の
対応の方向性について検討を行い、報告書の取りまとめを行ったところである。
2 発達障害者支援施策の取組み
(1)発達障害者の地域支援体制の確立
各都道府県・指定都市に設置する発達障害者支援センターにおいて、発達障害者やその家族などに対して、
相談支援、発達支援及び就労支援等を行うとともに、都道府県等に支援体制整備検討委員会を設置して、
各圏域において、各ライフステージに対応した一貫した支援を行うための支援関係機関のネットワークを
構築することで、発達障害者の地域支援体制の整備を進めてきたところである。2009(平成21)年度は、
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これらに加え、市町村における個別の支援計画の作成等を含む支援体制の整備状況の調査及び評価を実施
し、都道府県によるサポートを行うことで支援体制の充実を図ることとしている。また、様々な子どもの
心の問題、児童虐待や発達障害に対応するため、都道府県において、拠点病院を中核とし、各医療機関や
保健福祉関係機関等が連携した支援体制の構築を図るため、子どもの心の診療拠点病院機構推進事業を実
施している。
(2)発達障害者への支援手法の開発や普及啓発の着実な実施
発達障害のある子どもの成長に沿った一貫した支援となるよう先駆的な取組みを通じて発達障害への有
効な支援手法を開発する発達障害者支援開発事業や、国立障害者リハビリテーションを中心に、青年期発
達障害者を対象に地域での職業生活を含めた自立生活を実現するための就労支援体制のサービスモデルの
確立を推進するとともに、2008(平成20)年3月に設置した発達障害者情報センターにおける全国の発達
障害者支援機関や一般国民に対する普及啓発活動を充実するほか、各支援現場等において支援を推進して
いる方々を対象とした発達障害支援に関する研修の充実を図ることとしている。
また、2007(平成19)年12月、国連総会第3委員会において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」
に定める決議が採択されたことを受け、2009 年4月2日には、厚生労働省及び日本自閉症協会の主催によ
り、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るためのシンポジウムが開催されたとこ
ろである。
さらに、関係団体等において提唱された4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国
の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施されている。
3 発達障害者に対する就労支援の推進
ハローワークの専門援助部門で、発達障害者個々の特性に応じた職業相談等を実施するとともに、地域障
害者職業センターで、職業評価、職業準備支援等専門的な各種職業リハビリテーションを実施している。
また、就業面及び生活面の一体的な相談・支援を行う障害者就業・生活支援センターの利用や、必要に応
じ、障害者試行雇用(トライアル雇用)事業やジョブコーチ支援の利用も可能である。
2007(平成19)年度から若年求職者の多い労働局で、ハローワークの一般窓口を利用する発達障害等の
困難を抱える求職者に対し、その希望や特性に応じ専門支援機関に誘導するとともに、障害者向け支援を
希望しない場合は、一般窓口で個別相談、支援を行う「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログ
ラム」を実施するとともに、これら労働局に就労支援機器を整備している。また、2006(平成18)年度から、
発達障害者支援センターで、就労支援や雇用管理ノウハウ等を付与する講習を行うとともに、発達障害者
との体験交流会を開催する「発達障害者就労支援者育成事業」を実施している。さらに、2009(平成21)年度
には、「発達障害者雇用開発助成金(発達障害者の雇用促進モデル事業)」を創設したところである。そ
の他、障害者職業総合センターで発達障害者の就労支援に関する研究、技法開発及びその蓄積を図るとと
もに、これら技法開発の成果を活用し、地域障害者職業センターの一部で専門的支援の試行を行っている
(障害者に対する就労支援の推進については、第4節(204頁)参照)。
第4節 障害者の職業的自立に向けた就労支援の総合的推進
1 改正障害者雇用促進法の成立
近年、障害者の就労意欲は高まりを見せているが、一方で地域の身近な雇用の場である中小企業での障害
者雇用が低下傾向にあること等を背景に、「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正を行った。改正
法は2008(平成20)年12月に成立・公布し、2009(平成21)年4月より順次施行されている。
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主な改正点としては、①障害者雇用納付金の納付義務等の対象範囲を現行の常用労働者301人以上の企業
から、101 人以上の企業へと段階的に拡大すること、②障害者雇用義務の対象に短時間労働者(週20 時間
以上30時間未満)を追加すること等であり、これらの施行を通じ、更なる障害者雇用に係る取組みの充実
を図ることとしている(上記①及び②については、2010(平成22)年7月より施行。)。
2 障害者の雇用状況
障害者の雇用状況については、全般的な雇用情勢が悪化する中、ハローワークを通じた障害者の就職件数
は過去最高であった前年度を下回ったものの、前々年度の水準は上回る44,463件(2008(平成20)年度)
となっている。また2008年6月1日現在、民間企業の実雇用率は1.59%と前年に比べて0.04ポイント上昇
している。しかし一方で、有効求職者数は、143,533人(2009(平成21)年3月末現在)と依然として多数
であり、また、雇用率達成企業の割合も44.9%にとどまっている。
我が国の障害者雇用対策は、「障害者基本計画」(2002(平成14)年12月閣議決定)や、同計画に基づ
く施策を着実に推進するため、後期(2008年度から2012(平成24)年度)を計画期間とする「重点施策実
施5か年計画」、さらに、2009年度から2012年度を計画期間として新たに定められた「障害者雇用対策基
本方針」等に基づき、働くことを希望する障害者が、その能力を最大限に発揮し、就労を通じた社会参加
を実現し、職業的自立を図ることができるよう、障害者の就労支援の更なる拡充を図っていくこととして
いる。
3 雇用率制度の推進等による雇用機会の拡大
(1)法定雇用率達成指導の充実・強化
我が国の障害者雇用対策の柱は、障害者雇用率制度である。障害者雇用促進法に基づき、事業主は、その
法定雇用率に相当する数以上の身体障害者、知的障害者を雇用しなければならない(精神障害者について
は、精神障害者保健福祉手帳所持者を雇用している場合は、各企業における実雇用率にカウントできる。)。
雇用率達成に向けて、企業における障害者の計画的な雇用に向けた取組みを促進するため、ハローワーク
では、2006(平成18)年度に見直した未達成企業に対する指導基準に基づき、障害者の雇用率が低い事業
主に対して雇入れ計画の作成を命じ、計画に沿って雇用率を達成するよう指導しており、計画が適正に実
施されない場合には、勧告や企業名の公表などを行っている。また、国、地方公共団体等の公的機関につ
いては、2006年10月に設定した、都道府県教育委員会を始めとする公的機関の法定雇用率達成に向けた指
導の目標の達成に向けて指導を徹底しているところであり、2008(平成20)年11月に、すべての公的機関
について、同年6月1日現在の雇用状況を発表し、各省庁・地方公共団体及び特殊法人に対し、障害者の
更なる採用について勧奨している。
(2)納付金制度に基づく各種支援措置
障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害者の雇用を容易にし、社会全体として
の障害者の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度が設けられている。
この制度により、法定雇用率未達成の事業主(常用雇用労働者数301人以上)から納付金を徴収(不足数
1人につき月額5万円)するとともに、一定水準を超えて障害者を雇用している事業主に対しては、障害
者雇用調整金、報奨金を支給するほか、障害者を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に
対する助成金の支給や在宅就業障害者等に仕事を発注する企業に対する特例調整金等の支給を行っている。
なお、2008年の障害者雇用促進法の改正により、納付金の適用対象が、2010(平成22)年7月より常用
雇用労働者数201人以上、2015(平成27)年4月より常用雇用労働者数101人以上の事業主に段階的に拡
大される。
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4 障害者に対する就労支援の推進
ハローワークでは、求職申込みを行う障害者に対し、障害の態様に応じたきめ細かな職業相談、職業紹介
や就職後の指導・助言、障害者試行雇用(トライアル雇用)事業等の職業リハビリテーションを行ってい
る。また、地域障害者職業センターでは、障害者職業カウンセラーがハローワークと密接な連携を図りな
がら、障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
や事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談、助言等の各種支援を行っている。さらに、障害者就業・
生活支援センターでは、障害者の身近な地域において雇用、福祉、教育等の地域の関係機関のネットワー
クを形成し、就業面及び生活面における一体的な支援を行っている。
(1)中小企業等における障害者雇用促進のための重点的な支援
現下の厳しい雇用情勢等も踏まえ、中小企業等における障害者雇用を促進するため、2009(平成21)年
2月より、初めて障害者を雇用した中小企業に対して奨励金(100万円)を支給する障害者初回雇用奨励金
や、特例子会社等の設立促進のための助成措置(会社を設立し、10人以上の雇用で2,000万円以上支給等)
である特例子会社等設立促進助成金を創設するなど、中小企業等における障害者雇用促進のための重点的
な支援制度を実施している。
(2)雇用・福祉・教育等の連携による就労支援の強化
障害者の地域における自立を推進するためには、雇用施策と福祉施策、教育施策との有機的な連携を図る
ことが重要である。そこで、ハローワークが中心となり、就労支援関係機関等と連携した「チーム支援」
により、福祉的就労から一般雇用への移行を促進するための支援を実施しているほか、障害者雇用に実績
のある企業のノウハウを活用したセミナーを実施すること等により、福祉施設の職員、特別支援学校の生
徒、保護者及び教職員の一般雇用についての理解の促進、雇用支援策に関する理解・ノウハウの向上を図
っている。
さらに障害者就業・生活支援センターについては設置数の拡充を図っている(2008(平成20)年度206
か所。2011(平成23)年度までに全障害保健福祉圏域へ設置予定。)。
また、公的機関における知的障害者等の採用の促進は、政府の障害者施策推進本部においても重要な課題
とされており、2008 年度には、知的障害者等を各府省庁等で非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の
経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて、一般企業等への就職の実現を図る「チャレンジ雇用」を国の
行政機関において実施している。
(3)障害特性に応じた支援策の充実・強化
障害者の雇用促進のためには、障害特性に応じたきめ細やかな支援を実施することが重要である。そこで、
ハローワークの専門援助部門や地域障害者職業センターにおける支援のほか、精神障害者を対象として、
2008 年度に創設した一定程度の期間をかけて常用雇用を目指す「精神障害者ステップアップ雇用奨励金」
の運用や「精神障害者就職サポーター」のハローワークへの配置を行っているほか、2009 年度からは、精
神障害者の雇用促進のための取組みを委託し、ノウハウを構築するための「精神障害者雇用促進モデル事
業」を実施している。また、地域障害者職業センターにおいて、主治医等との連携の下、精神障害者の支
援ニーズに対して総合的な支援を実施しており、特に職場復帰支援(リワーク支援)ではうつ病等休職者に
対し、障害者職業総合センターが中心となり開発した最新の技法を導入し、生活リズムの立て直し、スト
レス対処等適応力の向上、職場の受入体制の整備、雇用管理に関する助言等を行っている。
発達障害者を対象とした支援としては、2009 年度より、地域障害者職業センターの支援を受けた発達障
害者を新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握し報告する事業主に対する助成(「発達障害者雇用
開発助成金(発達障害者の雇用促進モデル事業)」)を創設し、発達障害者の就労を支援するとともに、
その雇用管理上の課題等の把握を行うこととしているほか、「若年コミュニケーション能力要支援者就職
プログラム」、「発達障害者就労支援者育成事業」、「発達障害者に対する職業リハビリテーション支援
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技法の開発及び地域障害者職業センターにおける試行実施」を行っている(発達障害者に対する就労支援
については、第3節(202頁)参照)。
また、難病がある人を対象とした支援としては、2009 年度より、難病のある人を新たに雇い入れ、雇用
管理に関する事項を把握し報告する事業主に対する助成(「難治性疾患患者雇用開発助成金(難病のある
人の雇用促進モデル事業)」)を行うことにより、難病のある人の就労を支援するとともに、その雇用管
理上の課題等の把握を行うこととしている。
(4)平成21年度補正予算における障害者雇用対策
現下の厳しい雇用失業情勢の中で、障害者の解雇者数も大幅に増加しており、その離職を未然に防止する
とともに、やむを得ずに離職に至った方に対しては、早期の再就職に向けてきめ細かい就労支援を行う必
要があることから、平成21年度補正予算において、事業主が休業等を実施した場合の、雇用調整助成金制
度の障害者に関する助成率の引上げ、障害者が公的機関において一般雇用に向けた就労経験を積む「チャ
レンジ雇用」の拡大、ハローワークにおける障害者に対する就労支援体制の強化等を行っている。
5 障害者に対する職業能力開発の推進
(1)一般の公共職業能力開発施設における受入れの推進
一般の公共職業能力開発施設において、知的障害や発達障害のある人を対象とした訓練コースの設置を促
進するとともに、障害の有無にかかわらず職業訓練が受けられるよう施設のバリアフリー化などを推進す
ることにより、受講機会の拡充を図っている。
(2)障害者職業能力開発校における職業訓練の推進
一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障
害者職業能力開発校を設置し、職業訓練を実施している。
障害者職業能力開発校においては、入校者の障害の重度化、多様化が進んでいることを踏まえ、個々の訓
練生の障害の態様を十分に考慮し、きめ細かい支援を行うとともに、サービス経済化、IT化の進展等に対
応して、職業訓練内容の充実を図ることにより、障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練の実施に努
めている。
(3)障害の態様に応じた多様な委託訓練(障害者委託訓練)
雇用・就業を希望する障害のある人の増大に対応し、障害のある人が居住する地域で障害特性や企業の人
材ニーズに応じた職業訓練を受講できるよう、企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練
機関等を活用した障害者委託訓練を各都道府県において実施している。障害者委託訓練の受講者は年々増
加しており、2008(平成20)年度においては、さらに訓練定員を大幅に増やし、障害のある人の職業訓練
を推進している。
(4)政令指定都市における職業能力開発の推進
教育、福祉、医療などの実施主体である政令指定都市において、特別支援学校や福祉施設などを含む障害
者職業能力開発のネットワークを構築するとともに、職業能力開発に係る相談・情報提供、潜在的職業訓
練ニーズの把握を行う障害者職業能力開発プロモート事業を実施し、障害のある人の態様・希望や企業ニ
ーズに対応した職業訓練を推進している。
(5)障害のある人の職業能力開発に関する啓発
障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加できるよう、
その職業能力の向上を図るとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人
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の雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、全国障害者技能競技大会を1972(昭
和47)年から実施している。2008 年度の第30 回大会は千葉県において、全国技能五輪大会と同時期に開
催された。
6 「工賃倍増5か年計画」の推進
障害者が地域で経済的にも自立して生活するためには、一般就労への移行支援のみならず、福祉施設等に
おける工賃水準の向上を図ることが重要である。工賃水準の向上については、2007(平成19)年2月に取
りまとめられた「成長力底上げ戦略」に「『工賃倍増5か年計画』による福祉的就労の底上げ」として位
置づけられ、官民一体となった取組みを推進することとしており(図表6-4-1)、本事業により、都
道府県ごとに工賃の倍増を図るための具体的な方策を定めた「工賃倍増計画」を策定し、5年後の2011(平
成23)年には現状の工賃の倍増を目指すこととしている。具体的には、各事業所において、民間企業の技
術、ノウハウ等を活用し、経営コンサルタントや専門性の高い技術者、企業就労経験者の受入れによる経
営改善や企業経営感覚の醸成を図るとともに、一般企業と協力して商品開発や市場開拓を行うこととして
いるほか、都道府県において、利用者の一般就労に向けた職業能力向上のための職業指導員等の研修を実
施することとしている。
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